バルーン関連特許明細書:「高分子材を径方向に配向する」について考える

翻訳の学習記録

ビデオセミナー4192号でコメントいただきありがとうございます。

ご指摘いただいた文章については、書こうとした内容を端折りすぎてしまったこと、誤って解釈していた点があったことから意味が通じない内容となってしまいました。再考して別途記録します。

さて、タイトルの件について、当初以下のように想像していました: バルーンを拡張するということは直径を大きくすることなので、「高分子材を径方向に配向する」とはこの点に関わることなのか。

バルーンの拡張

ビデオセミナーでいただいたヒントを元に、バルーンの層の図をじっと見ていて思い当たることがありました。

そもそもバルーンに高い強度と柔軟性が求められる理由は破裂防止ではないかと。

ということは、直径を大きくする⇒膨張性を高めることではないだろう。バルーンを膨らませる圧力(拡張圧)に耐えつつ過度な膨張性を抑えて破裂しないようにするために「高分子材を径方向に配向する」必要があるのだろうと考えました。

バルーンの添付文書にはバルーン径ごとに推奨拡張圧と最大拡張圧が記載されており、拡張圧はバルーン径が大きくなるにつれて低下しています。 バルーンの直径が大きくなればなるほど、拡張時にバルーンにかかる負荷が増すということですね。

バルーンの層

今回読んだ明細書で説明しているバルーンは、ベースとなる基層バルーン、ファイバーを包みこんだマトリックス材料、そして外層バルーンの3層構造をもつ複合バルーンです。

層というとつい薄い膜のようなものを想像してしまいます。自分で図を描いてみてようやく高分子鎖が「径方向に配向された」状態を立体的に捉えることができるようになりました。 マトリックス材料とは複合材料の母材のこと。このマトリックス材料に強化材としてファイバーを組み合わせます。

物質中での高分子材の構造

高分子の構造には結晶と非晶質の2つの構造があるようです。

結晶⇒分子が同じ向き、同じ間隔で整列している。

非晶質⇒分子の向きや間隔がランダム。

何本も絡み合った長い鎖状の高分子が1本1本ほぐれて折りたたまれることを配向といい、分子鎖が配向することを結晶化というのだそうです。

結晶性の高い高分子材は硬くて変形しにくい反面、柔軟性に欠ける、割れやすいといったデメリットがあるようです。

高分子材の配向方向

明細書では、配向可能な好ましい高分子材として芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートをあげています。配向性を制御しやすい材料を用いてバルーンに求められる強度を達成するということですね。

結晶性の高分子材は配向方向に強度が増して伸びにくくなるそうです。つまり、「径方向に配向された」高分子材は耐圧性が高く膨張しにくいということになります。

逆にいうと、径方向の配向が弱ければ耐圧性が低下して膨張しやすくなるということです。

つまり破裂しやすくなります。

基層バルーンと外層バルーンに「径方向に配向された」高分子材を用いる理由はやはり耐圧性を高めるためと考えられます。

ファイバーの役割

複合バルーンでもう1つ重要な役割を果たすのがファイバーです。

ファイバーの種類とその網目構造がバルーンの膨張性に影響を及ぼします。バルーンの拡張が最小限となるような、伸長性の低いファイバーを選択する必要があるようです。

明細書を読み進めると、実施例では長尺方向及び径方向いずれも非膨張性を備えることが望ましいと記載されています。

まとめ

「径方向に配向する(radially oriented)」ということは、今回の明細書を読むうえでとても重要な概念だったことが分かりました。この言葉の意味を調べただけでは、明細書で説明されている技術を理解することは困難だったと思います。

この概念について考えたことで、明細書の見え方が変わってきました。

ところでイカは胴体を膨らませて海水を取り込み、漏斗と呼ばれる管から一気に吐き出すことによって推進力を得ているそうです(ジェット推進)。この漏斗を前後左右に曲げることで、自由自在に進むことができるのだそうです。

横方向に並ぶ筋繊維はこのようなイカの泳ぎ方と関係があるのではないかと思いました。さらに縦方向に並ぶ豊富なコラーゲン繊維によって骨のない体を支えて柔軟性を高め、自由自在な泳ぎを実現しているのだと思います。

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